ヒルマ・アフ・クリント──色彩のスピリチュアリティ

港千尋 著

定価:本体2,500円+税
2025年3月17日書店発売

B6変型判上製 丸背 カバー装 288頁
ISBN978-4-86784-009-2
装幀:間村俊一
カバー装画:ヒルマ・アフ・クリント

アジア初の大規模展、3月4日より東京国立近代美術館で開催!(主催:国立近代美術館、NHK、日経新聞社) 彗星のごとく世紀をまたいで現れた、抽象画のパイオニア、ヒルマ・アフ・クリント。躍動する色彩と神秘的な体系をそなえた絵画群は女性たちによるスピリチュアルな世界との交信から誕生した。その仕事と人生の場所をたんねんに訪ね、多くの作品と対話を続けてきた第一人者による書下し!

重要なことは「霊的な知」が[…]女性たちのグループによる実践だったことである。それはいたわり支え合うという意味での配慮の共同体である。[…]女性たちによるケアの共同体がなければ、これらの作品の成立はなかったであろう。この点で彼女たちのささやかな活動は、「霊的な知」の、別の可能性を示していると言えるように思う。[…]その作品がコンテンポラリーアートとして輝くのと同じように、彼女たちの実践もまた、今日のグローバルな地平において、より強く響くのではないかと思う。(本文より)


ヒルマ・アフ・クリント(Hilma af Klint)は、1862年にストックホルムで生まれ、1944年千点以上の作品を残して逝去したスウェーデンの女性画家。没後長い時間を経て、今世紀になってようやく発見された。ニューヨーク・グッゲンハイム美術館での展示が空前の成功を収め、世界の美術館が相次いで展覧会を開催。日本では今年3月より、東京国立近代美術館で大規模な回顧展が開催される。1906年から1915年まで約10年をかけて制作された代表作「神殿のための絵画」シリーズをはじめ、霊的な知をメッセージとして受け取り画筆に託して描いたそれらの絵は、カンディンスキーやモンドリアンに先駆する抽象画のパイオニアとして驚きを持って迎えられた。その作品世界は、明るい色彩感、コンテンポラリーアートと見まごう今描かれたかのような現代性を備えており、創作方法の神秘性とも相まって、むしろ未来からやって来た画家として、これから大きな注目を浴びるに違いない。