パレスチナ、時代を越える呼び声─パレスチナ論集成
鵜飼哲 著
定価:本体4,000円+税
2026年12月5日書店発売
四六判上製 カバー装 604頁
ISBN978-4-86784-015-3
装幀:間村俊一
カバー写真:Jean-Claude Coutausse
私たちはパレスチナを解放すると考えているけれど、実際には毎日少しずつパレスチナが私たちを解放している。(リーマー・ハサン)
80年代から現在に至る、パレスチナをめぐる全論考収載。新原稿、単行本初収録原稿多数。パレスチナの真実を伝える、告発と闘争のドキュメント集成。「パレスチナ独立宣言」併録。
1987年のインティファーダからやがて40年、この間の中東・パレスチナ情勢を追いながら、そのつどの状況のなかで記された考察は、つねに私たちに出来事の真実を伝え、今も最も信頼できる言葉であり続ける。インティファーダ、湾岸戦争、オスロ合意、自治政府の成立、中東和平の挫折、9・11、イラク戦争、自治区の分裂、分離壁の建設、ガザ爆撃…そして現在のジェノサイド。本書は、状況のただ中に、時代を越える呼び声を聞きとり、未来に向けて放つ告発と闘争のドキュメントである。西洋におけるパレスチナ最大の友ジャン・ジュネ、ゴダール、サイード、デリダ、ミッシェル・クレイフィらの、パレスチナ・イスラエルをめぐる思索に即した論考も必読。アラビア語原文からの初の日本語訳「パレスチナ独立宣言」(ハディ・ハーニ訳)併録。
国際法の蹂躙こそ「平和」だと強弁する勢力の前で、現存する「平和」、これが「平和」であると現在言われているものは、蒼白のまま立ち尽くしている。イスラエルによる無数の国連決議の無視を半世紀以上にわたって黙認し、制裁、処罰を課すことを試みさえしなかった国際社会は、「力による平和」の恫喝の前でただ震えているだけだ。〔…〕けれども、耳を澄ませば、もう一つの「平和」を呼ぶ声が聞こえる。ガザから、ヨルダン川西岸から、エルサレムから、レバノンから発せられる、平和を求めるパレスチナ人の声。それに呼応する、世界各地の人々の声。いまだ存在しない、来るべき「平和」を呼び求めるこれらの声は、国際法の制度の内と外を横断して、今、ゆっくり姿を現しつつある。 (本文より)
序 インティファーダ四〇周年を前に
インティファーダ、パレスチナの新しい〈顔〉
I
イスラエル/パレスチナ問題と東アジア
「新しい中東」以後 「裁き」から「革命的平和」へ
パレスチナと気候、二つの正義、一つの闘い
殺戮者の手を縛るために
「ガザ・モノローグを行う東大生有志の会」の問いかけに応えて
II
大侵攻前夜 国際作家議会代表団のパレスチナ訪問
九月一一日の「結び目」
ある集い
ある妄想の未来 いかに「テロ」の影の外に出るか
「地獄への道は善意で敷きつめられている」 来るべき「テロリズム批判」のために
存在を賭けた〈嘘〉との闘い
[書評]西谷修『「テロとの戦争」とは何か─9・11以後の世界』
III
一月七日以前 アラブ人の友人たちとの対話から
パレスチナ連帯デモが禁止される国から フランス『共和国の原住民党』の闘い
「戦士社会」と「積極的平和主義」 アルジェリアから〈戦争の現在〉を考える
歴史的類比と政治的類比のあいだ
「シャヒード、一〇〇の命」沖縄展に寄せて
[書評]イラン・ハレヴィ『ユダヤ人の歴史』
[書評]岡崎弘樹『アラブ近代思想家の専制批判』
[書評]岡真理『アラブ、祈りとしての文学』
IV
「第三の眼」を求めて ラビン暗殺の思想的マグニチュード
アブデルケビール・ハティビのイスラエル/パレスチナ論 一九七〇年代アラブ人知識人の一視点
反ユダヤ主義とシオニズム アーレント『ユダヤ論集』を読む
イスラームと女性の地位 まず、知るべきこと
そして誰も来なくなった ジュネーブ条約体制の危機とPKO時代の〈難民〉
法の砂漠 カントと国際法の〈トポス〉
戦争、あるいは限界で生きることを学ぶ
V
パレスチナのイマージュと「世界記憶」の生成 ミシェル・クレイフィ/鵜飼哲
破壊された時を求めて ミシェル・クレイフィ『石の賛美歌』のために
フランスの移民運動と文化 シャレフからクレイフィヘ
「豊穣な記憶」とは何か
境界の上に、境界の彼方に 『ルート181』に寄せて
断絶の大地、来るべき共生は
眩暈の造形 パレスチナ映画史における『ミラル』
応答する力、あるいは〈歴史の歴史〉 ゴダールへの途上で
真理の二つの顔、あるいは敗者たちの詩人 ジャン=リュック・ゴダールのために
歴史の闇への旅 『ショアー』とフェルマン『声の回帰』
VI
フロイトの読者、エドワード・サイード
〈始まり〉のサイード
[書評]エドワード・サイード『オリエンタリズム』
[書評]エドワード・サイード『知識人の表象』
VII
いくつもの砂漠、いくつもの夜
不可視のヴィジョンと隠れた栄光 『シャティーラの四時間』をめぐって
生きているテクスト 表現・論争・出来事
〈ユートピア〉としてのパレスチナ ジャン・ジュネとアラブ世界の革命
『恋する虜』完成にいたるジュネ晩年の歩み
中東現代史の闇を照明する巡礼の旅 リヒャルト・ディンド『シャティーラのジュネ』
パレスチナ独立宣言 (ハディ・ハーニ訳)
あとがき
著者
鵜飼哲(うかい さとし)
1955年生まれ。フランス文学・思想専攻。一橋大学大学院言語社会研究科教授を経て、同大学名誉教授。
著書に、『抵抗への招待』(1997)『ジャッキー・デリダの墓』(2014)『いくつもの砂漠、いくつもの夜:災厄の時代の喪と批評』(2023。以上みすず書房)、『償いのアルケオロジー』(河出書房新社、1997)、『応答する力:来るべき言葉たちへ』(青土社、2003)、『主権のかなたで』(岩波書店、2008)、『テロルはどこから到来したか:その政治的主体と思想』『まつろわぬ者たちの祭り:日本型祝賀資本主義批判』(以上インパクト出版会、2020)、『動物のまなざしのもとで : 種と文化の境界を問い直す』(編著、勁草書房、2022)他。
訳書に、ジャン・ジュネ『恋する虜:パレスチナへの旅』(共訳、人文書院、1994)『アルベルト・ジャコメッティのアトリエ』(現代企画室、1999)『シャティーラの四時間』(共訳、インスクリプト、2010)、『公然たる敵』(共訳、月曜社、2011)、ジャック・デリダ『他の岬:ヨーロッパと民主主義』(共訳、1993)『盲者の記憶:自画像およびその他の廃墟』(1998)『友愛のポリティックス』(共訳、2003)『生きることを学ぶ、終に』(2005)『ならず者たち』(共訳、2009。以上みすず書房)、『精神分析の抵抗 : フロイト、ラカン、フーコー』(共訳、青土社、2007)『動物を追う、ゆえに私は(動物で)ある』(2023)『言葉の眼:深淵と火山』(2026。以上ちくま学芸文庫)、エドマンド・ホワイト『ジュネ伝』上下(共訳、河出書房新社、2003)、アブデルケビール・ハティビ『マグレブ 複数文化のトポス : ハティビ評論集』(共訳、青土社、2004)、ヤコヴ・ラブキン『イスラエルとパレスチナ:ユダヤ教は植民地支配を拒絶する』(岩波書店、2024)、エルネスト・ルナン他『国民とは何か』(共訳。インスクリプト、1998)他。
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