美学における居心地の悪さ
ジャック・ランシエール 著
松葉祥一・椎名亮輔 訳
定価:本体3,000円+税
2025年7月7日書店発売
四六判上製 丸背 カバー装 240頁
ISBN978-4-900997-79-0
装幀:間村俊一
カバー写真:港千尋
不純な領域としての《美学》がかかえるパラドックスを政治を変革するものの次元へと解放する、真にラディカルな美学論。
観念的な美か、作品そのものか、いずれかの領域においてなされてきた美学の言説を、二つの領域が混在する「不純なもの」としてラディカルに問い直す。ミメーシスという軛から解き放たれた芸術がなす「感性的なものの分有」の再編成から、芸術と政治のうちにある美学の論理をうちたてる思考の集積。
《美学は、芸術を「何でもあり」にしたかどで告発され、また芸術を哲学的絶対や社会的革命といったあやしげな約束に迷い込ませたかどで告発されているのである。私の意図は美学を「擁護する」ことではなく、この語が意味することを明らかにするのを手助けすることであり、芸術の機能体制や言説の母胎として、そして芸術の固有性を同定する形式として、様々な形式による感性的経験のあいだにある関係を再配分するものとして、この語が意味するものを明らかにすることである。》(本書「序論」より)
序論
美学の政治
政治としての美学
クリティカル・アートの諸問題と変容
モダニズムの二律背反
アラン・バディウの非美学――モダニズムのねじれ
リオタールと崇高の美学――カントの反読解
美学と政治の倫理的転回
原註
訳註
訳者解説
著者
ジャック・ランシエール(Jacques Rancière)
1940年アルジェ生まれ。パリ第8大学名誉教授。哲学、美学。著書に、『資本論を読む』(共著、ちくま学芸文庫)、『プロレタリアートの夜』、 『無知なる教師』(法政大学出版局)、『不和あるいは了解なき了解』(インスクリプト)、『マラルメ』(水声社)、『沈黙する言葉』(インスクリプト、近刊)、『言葉の肉』(せりか書房)、『感性的なもののパルタージュ』(法政大学出版局)、『映画的寓話』、『イメージの運命』(平凡社)、『文学の政治』(水声社)、 『解放された観客』(法政大学出版局)、『アイステーシス』(インスクリプト、近刊)、『詩の畝』(法政大学出版局)などがある。
松葉祥一(Matsuba Shoichi)
前神戸看護大学教授。大手前大学非常勤講師。哲学、倫理学。著書に、『哲学的なものと政治的なもの』(青土社、2010)、『ナースのための実践論文講座』(人文書院、2008)、『来るべき〈民主主義〉』(共著、藤原書店、2003)ほか。訳書に、ジャック・デリダ『友愛のポリティックス』(共訳、みすず書房、2003)、デリダ『触覚、ジャン=リュック・ナンシーに触れる』(共訳、青土社、2000)、ジャック・ランシエール『不和あるいは了解なき了解』(インスクリプト、2005)、ランシエール『民主主義への憎悪』(インスクリプト、2008)などがある。
椎名亮輔(Shiina Ryosuke)
同志社女子大学教授。音楽美学、音楽哲学。著書に、『音楽的時間の変容』(現代思潮社、2005)、『狂気の西洋音楽史』(岩波書店、2010)、『デオダ・ド・セヴラック』(アルテスパブリッシング、2011)ほか。訳書に、マイケル・ナイマン『実験音楽』(水声社、1992)、エリック・マルティ『ルイ・アルチュセール』(現代思潮社、2001)、トビ・ナタン『他者の狂気』(共訳、みすず書房、2005)、ジュリア・クリステヴァ『ハンナ・アーレント』(共訳、作品社、2006)などがある。
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