孤島論
倉石信乃 著
定価:本体3,400円+税
2025年4月22日書店発売
四六判上製 丸背 カバー装 412頁
ISBN978-4-900997-94-3
装幀:間村俊一
カバー写真:笹岡啓子
南大東島、北大東島、種差、似島、徳之島、そして長万部、夕張、対雁、望来、ワイキキ、ヒロ、カラウパパ、石巻、花巻、新宮、八戸、大槌、飯舘…。「本土」や「中央」から遠く離れた、置き去りにされた土地を経巡り、数多くの写真、歴史地誌、文学作品に触れながら、その風景に身を晒しつつ綴る、類のない思考の軌跡。島とは何か。「「島」は、都市の内なる外部(ゲットー)や、都市の周縁から遠隔の地までの何処かにあって、排除され囲い込まれてある一定の閉じた区画を指すだろう」(本文より)。所在なく孤絶してあるというその特質を問い続けて、私たちの生きる場所を振り返り、非所有の共同性に微かな希望を託すに至る、アクチュアルな批評。「残置された風景」を撮り続けて現代を代表する写真家、北島敬三、笹岡啓子、露口啓二を論じる画期的論考も収録。著者の新生面を拓く待望の批評集成。
『孤島論』は、「本土」や「中央」から隔絶した島嶼やそれに類する地域に取材した写真などイメージの表現を通じて、そこに遺された歴史や政治、そして文化的な記憶をたどる試みである。[…]「本土」や「中央」の政治的・経済的な専横や無視による犠牲を強いられてきた、従属と孤絶をもって生き抜かざるをえない棄民の場所の歴史と現在、さらにはそのリアリティについて[…]。本書は[…]「中央」から遠く離れた個々の土地のもつ「島嶼性」islandnessなるものと、その「孤絶=隔離」isolationという性質により多くの投光を試みている。 (本文より)
はじめに
孤島論
遠近─東北と種差
似島の位置
島の印─宮本隆司の写真と徳之島アートプロジェクト
入植と先住─長万部と掛川源一郎の写真
写真史の死角から─露口啓二『移住』
望来─大友真志《Mourai》
ダイヤモンド・ヘッドと水田
ヒロ─気だるさについて
地中という空間─カラウパパ、石巻、花巻
風景以後─北島敬三の写真
しひあかりの身体性─豊島重之の思考について
後の世界に─笹岡啓子の写真
註
遠い浦に─あとがきにかえて
掲載図版出典一覧
初出一覧
地名・事項名索引
文献・作品・展覧会・公演名索引
人名索引
著者
倉石信乃(Shino Kuraishi)
1963年長野県生まれ。詩人・批評家。明治大学理工学部総合文化教室教授。
1989年から2007年まで横浜美術館学芸員を務め、その間、 「恩地孝四郎」展(1994年)、「ロバート・フランク─ムーヴィング・アウト」展(1995年)、「菅木志雄─スタンス」 展(1999年)、「中平卓馬原点復帰─横浜」展(2003年 )、 「李禹煥余白の芸術」展(2005年)などを担当した。
単著に、『反写真論』(オシリス、河出書房新社、1999年)、『スナップショット 写真の輝き』(大修館書店、2010年。日本写真協会学芸賞受賞)、『使い』(思潮社、2018年)。共編著として、『東日本大震災10年あかし testaments』(インスクリプト、2021年)、『明るい窓 風景表現の近代』(2003年)『失楽園 風景表現の近代1870–1945』(2004年、いずれも大修館書店)他。〈沖縄写真家シリーズ「琉球烈像」〉全9巻を仲里効との監修で刊行している(未來社、2010–12)。他に写真集解説、雑誌寄稿多数。
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