真っ白いスカンクたちの館
レイナルド・アレナス 著
安藤哲行 訳
定価:本体3,500円+税
2023年11月30日書店発売
四六判丸背上製 かがり綴カバー装 492頁
ISBN978-4-86784-003-0
装幀:間村俊一
カバー装画:平松麻
キューバの作家、レイナルド・アレナスの『夜明け前のセレスティーノ』に続く〈ペンタゴニア〉五部作の第二作目。バティスタ政権崩壊とカストロの革命政権の交代期に、貧しい生活にあえぐ家族に囲まれて思春期を送る青年フォルトゥナートを主人公に、現実と非現実、人称の境を飛び越えながら、生の苦難と魂の叫びを描く。パワフルな言葉が紡ぎだすめくるめく小説世界。
第一部 プロローグとエピローグ
一 蠅
第二部 不平不満のある者たちが話す
最初の苦悩
二つめの苦悩
三つめの苦悩
四つめの苦悩
五つめの苦悩
二 蠅
第三部 上演
六つめの苦悩
三 蠅
訳者あとがき
著者
レイナルド・アレナス(Reinaldo Arenas)
1943年7月16日〜 1990年12月7日.キューバのオリエンテ(現オルギン)県の県都オルギン近郊の寒村アグアス・クララスに生まれる.生後間もなく父が出奔し,母オネイダの実家に戻って祖父母と暮らすようになる.シエラ・マエストラを拠点にバティスタ政府軍と戦うカストロの革命軍に参加するため,1958年家を出る.1959年バティスタの国外脱出後,オルギンに戻る.1963年,国立図書館主催の朗読コンクールでの自作の「からっぽの靴」(邦訳:『ユリイカ』2001年9月号)朗読をきっかけに国立図書館での仕事に携わり,書架の本を手当たり次第に読む.1965年『夜明け前のセレスティーノ』脱稿(《ペンタゴニア1》,1967年刊行.邦訳:国書刊行会).次第にホモ・セクシュアルへの迫害が強まり,書き上げた原稿の国外への持ち出しも始まる.1966年『めくるめく世界』脱稿(1968年スイユ社がフランス語版刊行,メディシス賞受賞.国書刊行会),ビルヒリオ・ピニェーラと知りあう.1967年,レサマ=リマと知りあう.1969年『真白いスカンクたちの館』脱稿(《ペンタゴニア2》,1975年スイユ社刊行.本書),同年『ふたたび,海』(《ペンタゴニア3》)を脱稿するも友人が紛失したため再度執筆.1970年「革命は革命であることをやめ……確立された新たな階級をそなえた一つの新たな独裁である」としてキューバ革命を拒絶.1971年以降,ホモ・セクシュアルの公職追放,その後逮捕,再逮捕,国外脱出に失敗しての収監を経て,1980年5月マリエル港から脱出,マイアミに到り,12月にニューヨークに移る.1982年『ふたたび,海』をスペインのアルゴス・ベルガラ社より刊行.1987年『ハバナへの旅』(邦訳:現代企画室)脱稿.エイズと診断される.1988年『ドアマン』フランス語版によりメディシス賞最終候補に.フランス旅行.1990年『夜になるまえに』脱稿(1992年刊行.国書刊行会).癌の全身転移,不眠症,脱毛,視力低下,嚥下も困難になり,12月マンハッタンのアパートで大量の睡眠薬を飲み自死.1991年,『夏の色』(《ペンタゴニア4》),『襲撃』(《ペンタゴニア5》邦訳:水声社)出版.小説には他に,「パレードが終わる」(1981年,『目をつぶって』(1973)に一篇を加えて改題),『アルトゥーロ,いちばん輝く星』(1984年),『天使の丘』(1987年),『さよなら,ママ』(短篇集.1995年)などがある.
訳者
安藤哲行(Tetsuyuki, Ando)
1948年生まれ.ラテンアメリカ文学.摂南大学名誉教授.単著に『現代ラテンアメリカ文学併走』(松籟社).訳書に,レイナルド・アレナス『夜になるまえに』,『夜明け前のセレスティーノ』(いずれも国書刊行会),『ハバナへの旅』(現代企画室),ルイス・セプルペダ『パタゴニア・エキスプレス』(国書刊行会),エルネスト・サバト『英雄たちと墓』(集英社),マルタ・トラーバ『陽かがよう迷宮』(現代企画室),マヌエル・プイグ『天使の恥部』(白水社),カルロス・フエンテス『老いぼれグリンゴ』,ホルヘ・ボルピ『クリングゾールをさがして』,マリアーナ・エンリケス『わたしたちが火の中で失くしたもの』(いずれも河出書房新社),フアン・ホセ・アレオラ『共謀綺談』(松籟社),ホセ・エミリオ・パチェーコ『メドゥーサの血』(まろうど社)などがある.
画家
平松麻(Asa, Hiramatsu)
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