実況・近代建築史講義
中谷礼仁 著
定価:本体1,800円+税
2020年12月2日書店発売
A5判並製 208頁
ISBN978-4-900997-82-0
ブックデザイン:井川祥子
自然から様式へ──近代とは、近代建築とは
『実況・比較西洋建築史講義』と対をなす中谷建築史第一弾。ルネサンスから現代まで、ブルネレスキから藤森照信まで、近代500年の建築史を全12回で駆け抜ける。早稲田大学ティーチングアワード総長賞受賞講義を実況収録。近代建築の始まりをルネサンスにおき、第1部はルネサンスから産業革命まで、第2部はモダニズム建築の誕生と発展を概観する。第3部は日本に舞台を移し、江戸時代における建築の近代的萌芽を探り、現在を展望する。建築と建築様式の変遷、建築家たちがどのような課題に応え、どんな作品を生み出してきたのか、確かな歴史観の下にわかりやすく批評・解説。読んだら建築史が好きになる早稲田大学の人気講義をまるごと収録。版を重ねたLIXIL版の内容そのままに継続刊行。付録・近代建築家生没年年表付。
ルネサンス以降の建築は、問題の発見による新様式の誕生から始まり、それが飽きられ疲弊していき、その飽和状態から次の新しい問題が現れるというサイクルから逃れ出ることはありません。「問題の発見」→「解決」→「疲弊」→「新しい問題の発見」というサイクルが生まれたのです。
その意味で様式は繰り返されます。私たちが様式概念を獲得してしまって以来、自然な時間の流れは息絶え、形式的世界を往還するような宙づりの時間が始まりました。ルネサンス以降現在までは、そのような意味で「時間が宙づりにされた状態」であると言えるのではないでしょうか。
[…]ルネサンス以降の建築史は、中世までが自然的成長史であるのに比して、人為的な操作の歴史であるとも言えるでしょう。これは私たちと建築との間に、より疎遠さが加わったということでもあります。近代の建築表現の前提となる特徴とは、この疎遠さです。これは中世までの流れとはまったく違う段階なのだと思います。(本文より)
歴史とは何か、近代とは何か
I 西洋近代 ルネサンスから産業革命へ
第1回 時間の宙づりとルネサンス
第2回 マニエリスムからバロックへ
第3回 新古典主義と知性の暴発
第4回 折衷と廃墟 19世紀英国
第5回 産業革命と万国博覧会 20世紀直前の世界建築
II モダニズムの極北 20世紀芸術運動と建築
第6回 基準・空間・構築 ミース・ファン・デル・ローエ
第7回 構成・速度・時間 アドルフ・ロース/ル・コルビュジエ
第8回 ランダムネス・革命・宇宙
未来派/ロシア構成主義/バックミンスター・フラー
III 近代+日本+建築
「近代+日本+建築」への招待
第9回 白いくりがた 様式的自由と擬洋風建築
第10回 空白のメダイヨン 明治建築の成熟と崩壊
第11回 平和の発明 丹下健三について
第12回 クリティカル・グリーニズム 日本の建築1970年代以降
講義の公開に際して
収録情報/講義情報
図版出典
索引
[付録]実況・近代建築史講義年表
中谷礼仁(Nakatani, Norihito)
建築史。早稲田大学創造理工学部建築学科教授。現在長期持続集落研究・千年村プロジェクトを展開・継続中。2013年にはユーラシアプレートの境界上の居住・文明調査でアジア、地中海、アフリカ各地を巡歴。建築設計も手がける。2019年より生環境構築史をテーマに学際的Webzineを展開。<br>
著訳書に、『未来のコミューン──家、家族、共存のかたち』(インスクリプト、2019。2020年日本建築学会著作賞受賞)、『動く大地、住まいのかたち──プレート境界を旅する』(岩波書店、2017。2018年日本建築学会著作賞受賞)、『実況・近代建築史講義』(LIXIL出版、2017。2020年11月インスクリプトから再刊)、『今和次郎「日本の民家」再訪』(瀝青会名義、平凡社、2012。2013年日本生活学会今和次郎賞、同年第一回日本建築学会著作賞受賞)、『セヴェラルネス+──事物連鎖と都市・建築・人間』(鹿島出版会、2011)、『国学・明治・建築家──近代「日本国」建築の系譜をめぐって』(波乗社、1993)、ジョージ・クブラー『時のかたち──事物の歴史をめぐって』(共訳、SD選書、鹿島出版会、2018)他。
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