北米探偵小説論
野崎六助 著
定価:本体5,800円+税
1998年10月28日書店発売
四六判上製 8ポ二段組 976頁
ISBN4-900997-02-1
装幀:間村俊一
写真:港千尋
増補決定版3000枚。加筆1000枚。探偵小説という形式にアメリカ文学のすべてを叩き込み、明滅する歴史にアメリカの希望と悲劇を描ききる、野崎六助のライフワーク。作家=探偵=ヒーローの遍歴に帝国の彷徨を透視するその視線は、二十世紀極東の運命をも照らし出した。アメリカニズムの底に降り立ち、百年の希望を救出する比類なき大著。
完璧な書物というものはありえない。しかし明らかに不完全で不充分でありながら、そしてその不完全さが一目して瞭然でありながら、仮の姿をまとっている書物はありうるし、じっさいある。書くべきことを、その手前にまで攻め込みつつも、わずかのところで達成しえていない書物は確かにある。
本書の前身である青豹書房版『北米探偵小説論』が、ちょうどその例だといえよう。新しく復刊する機会を与えられたところで、不完全さを放置するにしのびなく、いくつかの明白な欠落を埋めて、以上のような体裁になった。
これを増補決定版としたい。
〔中略〕これでいくらかは七八年段階に抱いた、三千枚のアメリカ社会思想史としての探偵小説精神史に近付いたわけだろう。〔後略〕〔執筆覚書より〕
プロローグ パサージュとしての探偵小説論
本書の構成
灰色のノオト
ベンヤミンのパサージュ——方法について1
銀閣寺の大学生——方法について2
同時代のアメリカ
序章 鯨の腹の中に
1 カフカの探偵小説
2 征服者ポオ
3 総和と消去について
第I章 文芸復興・一九一三年
第II章 戦争は国家の健康法である
第III章 世界一周
1 バイブル・ベルトの間抜けたち
2 ある青年の入門
3 それ行け黄色いホームズ
4 一九二六年のツァラツストラ
5 オールド・マン
第IV章 時と砦について
1 カンパニー・タウンの殺戮
2 スタイヴィサント・クラブで昼食を
3 ファイロ・ヴァンスの料理帳
4 ニューヨーク・三〇年代・幼年期
5 メルヴィルの墓の下に
6 時とは打倒されねばならぬ一つの専制である
7 悲劇の記号学
8 やせっぽちのバラード
9 ニューディールの谷間で
10 天空のオベリストたち
11 エラリー君成年期に達す
12 フォークナーの光
第V章 合州国における戦争
1 喪われた十年
2 合衆国共産党の苦衷
3 大さわぎ探偵小説
4 クイーン氏の発見
5 大いなる眠り
6 山にはジャップはいない
7 永久亡命者の悲哀
8 ブラック・ボーイ・カントリー
第VI章 悲劇の社会学
1 ライツヴィルに還る
2 冷戦パズル
3 長い長いお別れ
4 鉄のカーテンを死守せよ
5 バーバリの岸辺か火星の土の上か
6 コズミック・ブルースを唄え
7 縞模様の五〇年代
8 抗議と逆抗議
第VII章 わが愛しき妻よわが鳩よ
1 ホワイト・ニグロの来歴について
2 二つのマクドナルド・スクール
3 六〇年代の家系
4 P・K・ディックのむすうのスティグマ
5 ブラック・ニグロの出立
6 ヴァニシング・アメリカン還る
7 ワイルドバンチ
第VIII章 エレクトリック・レディランドを見たか
1 流れよわが涙とP.K.D.はいった
2 me−ハードボイルドの研究
3 白人種馬男の考古学
4 南アフリカ人の血
5 黄色植民地人の憤怒
6 ウォンボー・ボーイズ
第IX章 アメリカの闇の奥で
1 ボーン・イン・ザ・USA
2 夜明け前のレスキュー
3 世界のための警察国家
4 ギミー・シェルター
5 ヴァリス・アゲイン
エピローグ 湾岸から遠く離れて
はしり書き的うしろ書き あるいは如何にして野崎六助氏は北米探偵小説論を書いたか
野崎六助
TOP > Published Books > 北米探偵小説論