フォークナー、ミシシッピ

エドゥアール・グリッサン 著
中村隆之 訳

定価:本体3,800円+税
2012年8月16日書店発売

四六判上製 424頁
ISBN978-4-900997-34-9
装幀:間村俊一
写真:港千尋

ルイジアナ州バトンルージュでの長期滞在を経て書き下ろされた、グリッサン唯一の作家論。20世紀アメリカ文学最大の作家フォークナーの文学世界に分け入り、黒人の立場から、フォークナーの問いを問い直し、ヨクナパトーファ・サーガにクレオール世界を読み込むことで、アメリカスの時空間に刷新された作家像を定着させる、壮大にしてエレガントな、後期グリッサンの代表作。

 

フォークナーの物語世界で進行するのはクレオール化である。グリッサンはフォークナーの作品群のうちにカリブ海地域が経験してきた歴史を読み取った。フォークナー作品における「崩壊」は言わば放埒、放縦なものとして家系に混血や近親相姦といった正統性の壊乱をもたらしながら閉域としての境界を踏み越えて遠方へと拡張する力である。つまりクレオール化だ。これがフォークナー論としての本書のおそらく最大の独創だろう。本書はその意味で後期グリッサンの詩学〈全 – 世界〉を背景に、アメリカスの時空間のうちにフォークナーを位置づけるという読解の試みであると言える。[訳者解説より]