柳田国男論

柄谷行人 著

定価:本体2,600円+税
2013年10月30日書店発売

四六判上製 298頁
ISBN978-4-900997-38-7
装幀:間村俊一
写真:港千尋

長らく封印されてきた著者32歳時の長篇評論「柳田国男試論」350枚、書下し序文を付して初の単行本化。柳田国男の〈方法〉を問い、柳田論に新たな視角を拓く。『マルクスその可能性の中心』と並行して執筆され、『日本近代文学の起源』に先駆・結実する最重要論考「柳田国男試論」(1974年)。他に「柳田国男の神」(1974年)、「柳田国男論」(1986年、既発表)を併録した柳田論集成として刊行する。
 

柳田の倫理学は、人間と人間の関係にではなく、人間と自然あるいは自然と自然との関係にすえられている。そのなかで、精神は何をなしうるか。柳田が突きつめて考えていたのはそういう問題だ。そこに、あの方法的意志があらわれる。方法的であることによってしか、精神は存立することができない。精神が負わされた宿命を、柳田国男ほどに考え且つ実行した人を私は知らないのである。(「柳田国男試論」より)