ヒッチコック
エリック・ロメール & クロード・シャブロル 著
木村建哉・小河原あや 訳
定価:本体2,800円+税
2015年1月10日書店発売
四六判上製 角背カバー装 264頁
ISBN978-4-900997-51-6
装幀:間村俊一
ヌーヴェルヴァーグが
ヒッチコックを顕揚する
1957年フランス、二人の駆け出しの映画作家が、世界で初めてヒッチコックの全作品を徹底的に論じ上げた──。秘密と告白、運命と意志、悪の誘惑、堕罪と救済、そしてサスペンス。通俗的な娯楽映画という世評に抗し、ヒッチコックの華麗な演出に潜む形而上学的主題へと迫った、ヌーヴェルヴァーグによる「作家主義」の記念碑的書物。
「ヒッチコックは、全映画史の中で最も偉大な、形式の発明者の一人である。おそらくムルナウとエイゼンシュテインだけが、この点に関して彼との比較に耐える。(……)ここでは、形式は内容を飾るのではない。形式が内容を創造するのだ。ヒッチコックのすべてがこの定式に集約される。我々が証明したかったのはまさにこのことである。」(本書「結論」より)
序文
第一章 イギリス時代
初期の映画 ゲインズボロー時代(一九二三 ─ 一九二七)
サイレントの終わり、トーキーの始まり ブリティッシュ・インターナショナル時代(一九二七 — 一九三二)
ゴーモン=ブリティッシュ時代(一九三四 — 一九三七)
ゲインズボロー=メイフラワー時代(一九三七 — 一九三九)
第二章 アメリカ時代(I) セルズニックと共に(一九三九 — 一九四五)
第三章 アメリカ時代(II) 『ロープ』から『知りすぎていた男』まで(一九四八 — 一九五六)
コンティニュイティの征服 『ロープ』(一九四八)
秘密と告白 『山羊座のもとに』(一九四九)
名人芸 『舞台恐怖症』(一九五〇)
数と形象 『見知らぬ乗客』(一九五一)
殉教の誘惑 『私は告白する』(一九五三)
第三の次元 『ダイヤルMを廻せ!』(一九五四)
母型 『裏窓』(一九五四)
修辞学の精華 『泥棒成金』(一九五五)
善人か悪人か 『ハリーの災難』(一九五五)
「サスペンス」の彼岸に 『知りすぎていた男』(一九五六)
結論 『間違えられた男』(一九五六)
訳注
アルフレッド・ヒッチコック フィルモグラフィ
ヒッチコック、新たな波——ロメール&シャブロル『ヒッチコック』の成立状況とその影響 小河原あや
訳者後書き 木村建哉
索引
著者
エリック・ロメール(Eric Rohmer)
1920日3月21日生まれ。本名モーリス・シェレール(Maurice Schérer)。シネクラブを組織しながら1950年に『ガゼット・デュ・シネマ』誌を発刊。その後『カイエ・デュ・シネマ』誌を中心に映画評を執筆する。1957–63年、同誌編集長。『獅子座』(1962)で長篇監督デビューし、「ヌーヴェルヴァーグ」の中心的な一人となる。代表作に『モード家の一夜』(1969)、『クレールの膝』(1970)、『O侯爵夫人』(1976)、『海辺のポーリーヌ』(1983)、『緑の光線』(1986)、『春のソナタ』(1989)に始まる「四季の物語」連作(–1998)、『グレースと侯爵』(2001)、『わが至上の愛〜アストレとセラドン〜』(2007、遺作)。邦訳書に小説『六つの本心の話』(細川晋訳、早川書房、1996年)、シナリオ集『四季の恋の物語』(中条志穂ほか訳、愛育社、1999年)、映画批評集『美の味わい』(梅本洋一・武田潔訳、勁草書房、1988年)。2010年1月11日死去。
クロード・シャブロル(Claude Chabrol)
1930年6月24日生まれ。シネクラブでロメールらと出会い、『カイエ・デュ・シネマ』誌を中心に映画批評家として活躍。1958年に「ヌーヴェルヴァーグ」の長篇第一作となる『美しきセルジュ』で監督デビュー。代表作に『いとこ同士』(1959)、『不貞の女』(1969)、『肉屋』(1970)、『主婦マリーがしたこと』(1988)、『ボヴァリー夫人』(1991)、『沈黙の女/ロウフィールド館の惨劇』(1995)、『石の微笑』(2004)、『引き裂かれた女』(2007)、『刑事ベラミー』(2009、遺作)等がある。邦訳書にフランソワ・ゲリフによる『不完全さの醍醐味——クロード・シャブロルとの対話』(大久保清朗訳、清流出版、2011年)。2010年9月12日死去。
訳者
木村建哉(きむら・たつや)
1964年生まれ。映画学、美学。専門は映画理論・映画美学、古典的ハリウッド映画研究。成城大学文芸学部准教授。共編著に『甦る相米慎二』(インスクリプト、2011年)。共著に『ドゥルーズ/ガタリの現在』(平凡社、2008年)ほか。共訳書にクリスチャン・メッツ『映画における意味作用に関する試論——映画記号学の基本問題』(水声社、2005年)、スラヴォイ・ジジェク監修『ヒッチコックによるラカン——映画的欲望の経済(エコノミー)』(トレヴィル、1994年)。論文に「ヒッチコック『見知らぬ乗客』における欲望/罪の移動の視覚化——深夜の密談のシーンの分析を中心に」(『成城文藝』221–223号、2012–13年)ほか。
小河原あや(おがわら・あや)
1976年生まれ。映画学、美学。専門はフランス映画、とりわけエリック・ロメール。成城大学文芸学部非常勤講師。共著に『映像人類学(シネ・アンスロポロジー)——人類学の新たな実践へ』(せりか書房、2014年)。論文に「ヒッチコック『ロープ』の長廻し移動撮影とショット繋ぎにおける「精神/道徳的」表現——ロメール&シャブロルの議論を導き手に」(『映像学』93号、2014年)、「エリック・ロメール監督『モンソーのパン屋の女の子』における「偶然」と映画映像の「超直接性」」(『成城文藝』225号、2013年)ほか。
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