未来のコミューン─家、家族、共存のかたち

中谷礼仁 著

定価:本体3,200円+税
2019年9月24日書店発売
2019年3月11日初版第2刷発行

四六判上製 320頁
ISBN978-4-900997-73-8
装幀:間村俊一
装画:大鹿智子

独自の回路から放つ新たな社会思想!
新たな共同性へ。家=人間と社会を調停する器、はいかに可能か。歴史を貫く共存の条件を探り、時空間を踏破して摑まれた経験知からその先のヴィジョンへと至る渾身の思考。

民俗学者・柳田国男が描いた家の事件をプロローグに、初源的な家の構成があらゆる住居に現れるプロセスを解明し、さらに近代的設備に内在する家の新たな神話体系を描いた原論である第一部。建築家アドルフ・ロースの装飾−身体制度論に端を発し、近代住宅デザインに込められた文明的課題を解剖、摘出した展開編の第二部。その後半から第三部にかけて、資本主義下における人間の労働と自発的活動との桎梏に目を向け、近代的共同体にまつわるめくるめくプロファイリングが始まる。共同体への希求がディストピアを招く近未来小説、アメリカの宗教的コミューンが巻き起こした事件の意味解明、1960年代末に精神医学者R・D・レインらが実践した反治療組織・キングズレイ・ホールの実証的復原とその批判。本書最終部では、病を社会との不適合による移行的状態ととらえ、病が持つ社会への働きかけの可能性を逆に検討する。「病」の共同の場としての家の再創造を検討し、その思考は新たな社会のヴィジョンを示唆するに至る。エピローグではコミュニティ・ホーム「べてぶくろ」での共同的家改修の試みに日常での確かな希望が託される。今和次郎、エンゲルス、シェーカー教、アーレント、クリストファー・アレグザンダーらを導きの糸に、著者の年来の営みが総括され、徹底した思考を家に向かってたたみかけた話題作。

「家、社会がそれぞれに含む要素の境界は注意深く再定義しうる。なによりも自らが望むべき両者の平衡状態に向けて、かたちとコンテクスト[クリストファー・アレクザンダー]の閾をほぐし、あきらめずに境界線を見いだし、再び集合し、新しく空間を確保すること。これが未知の、そして未来のコミューンである。」(本文より)