可能なるアナキズム─マルセル・モースと贈与のモラル

山田広昭 著

定価:本体3,400円+税
2020年9月25日書店発売

四六判上製 272頁
ISBN978-4-900997-77-6
装幀:間村俊一
カバー写真:港千尋

アナキズム・イメージを一新する共生の理論

権力なき共生はいかに可能か。マルセル・モースに端を発し、ポランニーを経由して、柄谷行人の交換様式論にいたる流れを追い、マルクス、ワルラスらの理論的探求、グレーバー、J・C・スコットらの実践的展望を援用しつつ、贈与のモラルを内包した交換様式の実現に来たるべき社会の構成原理を見出す。幾多の著作を読み込み、モースをアナキズムの文脈へと置きなおして、『贈与論』のアクチュアルな可能性を明らかにする。変革への道筋を描き出す、渾身の書下し。

私は未来社会への展望を[…]、それがいまなお保っている独特の挑発性のゆえに、アナキズムという名のもとに語ることを選択する。[…]非中心性、自主的連合、そしてつねにダイレクトに否を表明できる直接民主主義、これらはアナキズムの変わることのない基底である。アナキズムが絶対的自由主義と異なるのは、そこに互酬性の原理が不可欠のピースとして組み込まれているからである。[…]抗争と意にそぐわない協調と積極的な相互扶助とがないまぜに共存しているこの世界こそ、モースがその『贈与論』の結論として提示したモラル、「階級も国民も、そしてまた個人も、互いに対立しながらも殺し合うことなく、互いに自らを与えながらも自己を犠牲にすることがないようにする仕方を学ばなければならない」が、そのすべての価値を示す世界のあり方にほかならない。[…]本書の探求の道のりが、結局のところ戻ってくることになるのもまたこのモラルである。(本文より)