『実況・比較西洋建築史講義』『実況・近代建築史講義』刊行記念

実況・建築史講義オンライン篇 全6回連続講義

2021年1月27日 水曜日 19:00〜21:00

講師:中谷礼仁氏

『実況・比較西洋建築史講義』の刊行を機に、姉妹篇『実況・近代建築史講義』と併せて、二著のエッセンスをお届けする連続講義。
建築とは何か、歴史とは何か。ベーシックな問いを踏まえながら、各時代の建築物・建築技術に焦点をあわせ、その課題と展開を歴史的背景とともに解説。古代ギリシアから戦後日本まで、面白くてためになる中谷建築史の中からテーマを精選してオンラインでお届けします。

第二回は巨大な土木建築に際だった特徴を見せるローマを取り上げ、構法にも触れながら、都市への発展に不可欠な建築物と建築技術について解説します。

[全6回のテーマと日時]

第1回 建築史とは何か 古代ギリシャの達成、比較想像としての建築史、ウィトルウィウスを輪読する 1月13日 19時〜
第2回 都市とは何か 古代ローマにおける建築の拡張 1月27日 19時〜
第3回 建築の奇跡 ロマネスクからゴシックへ 2月10日 19時〜
第4回 漂う建築史 SFルネッサンスへの旅 2月24日 19時〜
第5回 近代日本建築への招待 白いくりがた 3月10日 19時〜
第6回 平和の発明 丹下健三について 3月24日 19時〜

メインテキスト『実況・比較西洋建築史講義』、『実況・近代建築史講義』(以上インスクリプト)
参考図書:『西洋建築史図集』(日本建築学会編、彰国社)
二回目の関連参考書籍はデビッド・マコーレイの『都市──ローマ人はどのように都市をつくったか』(西川幸治訳、岩波書店)です。

(必須ではありませんが、テキストが手許にあればより理解が深まります。)

[講師より一言]

私のもともとの専攻は、幕末から日本近代の建築思想と技術でした。しかし恩師いわく、常日頃より、どんな領域でも語る準備をしておかねばならないという。それゆえか大学の授業では、多くの先人によって磨かれた西洋建築史の講義も、21世紀初頭から受け持つようになりました。その時、以下の目標を立てました。
・学生時に聞いた時に、どうしても理解できなかった西洋建築展開の筋道を自分なりに解決して提示すること
・建築史という学問による事象発見の順序も、通常の建築史の年表的順序に加えて話すこと
そのために用いたのが比較という手法でした。建築史の独自性は、かたちによって時代を整理、判定することにあります。一般史が文献を基本にすることとの究極的な違いです。もちろん文献資料も併せて使いますが、古建築には「竣工■年、作者■■」というシールが貼ってあるとは限らないのです。この建築史の特質はたまに一般史と齟齬を起こします。その代表的なものは法隆寺再建・非再建論争です。この論争は文献研究によって、当時の建築史研究者が述べた様式、規格尺判定による非再建論を駆逐していくのですが、そもそもこの論争の構図を作り得たのが建築史の独自性だったと私は考えています。2つ以上の建築を比較するという基本的な手法は、文字を介さない分析方法として現在でも十分おもしろい学問方法だと思います。かたちの分析には、この比較を欠かすことはできません。その比較作業を通常の範囲より広げたのがこの『実況 比較西洋建築史講義』になります。[…]
歴史といえば暗記ものという考えに慣れている建築史の初学者にむけての、実は異議申し立ての教科書でもあり、ゲームなど仕込んでいろいろ楽しそうですが、実は上記のような難しいテーマを秘めています。(Nakatani Norihito’s Blographyより)

中谷礼仁
建築史。早稲田大学創造理工学部建築学科教授。著書に、『未来のコミューン──家、家族、共存のかたち』(インスクリプト、2019。2020年日本建築学会著作賞受賞)、『動く大地、住まいのかたち──プレート境界を旅する』(岩波書店、2017。2018年日本建築学会著作賞受賞)、『今和次郎「日本の民家」再訪』(瀝青会名義、平凡社、2012。2013年日本生活学会今和次郎賞、同年第一回日本建築学会著作賞受賞)、『セヴェラルネス+──事物連鎖と都市・建築・人間』(鹿島出版会、2011)他。訳書に、ジョージ・クブラー『時のかたち──事物の歴史をめぐって』(共訳、SD選書、鹿島出版会)。