PARADISE TEMPLE

管啓次郎 著

定価:本体1,800円+税
2021年12月15日書店発売

四六判変型ペーパーバック装 224頁
ISBN978-4-900997-93-6
装幀:磯辺加代子
カバー写真:吉江淳

平易なことばでつむがれる、類例のない詩と思索。
15か国以上の詩祭や大学で、日英仏西の4言語で朗読をおこなってきた詩人の2年ぶりの第8詩集。

「何に守られているのか?(文字に)/何にさらされているのか?(未知に)」。終わりのない歩行と彷徨をめぐって詩が刻まれる。旅行批判の書『斜線の旅』(インスクリプト)で読売文学賞を受賞(2011年)した作者の第8詩集は、強いられた停滞の日々に出口を探し、くりかえし新年を寿ぐ希望の書。「世界は影のない踊り場/悲しみもなく道もなく/思考が冷たい水のように光っている」。エドゥアール・グリッサンの惑星的詩学とゲイリー・スナイダーの野生の詩学、そして西脇順三郎の諧謔の詩学の合流。およそ類例のない世界が、平易な言語で展開する。「琥珀色の蜜の中を渡り鳥の群れが泳いでいる/シベリア鉄道追いかけてアラスカ鉄道追い抜いて」。海外研究者からも注目を集める詩人の新たな展開。

地形があり、気象がある。見えない波が打ち寄せ、知らない習俗が展開する。すべての超越性を否定した果てにあるのは、どんな誓願か。各国の詩祭や大学で招待朗読をおこなってきた詩人の、『犬探し/犬のパピルス』(2019年)以来2年ぶりの第8詩集。COVID-19下状況をも反映しつつ、詩を土地に返すことを試みる。「詩は土地にあり、土地を出ることはない。一見、どれほど抽象的な空間に見えようと、詩の場所はその地点の自然力に全面的につらぬかれ、それに依存している」(「あとがき」)。エレメンツの詩学の最前線における創作。